7月15日の党首討論 「輸入物価は約3割上昇」は日銀の統計どおり 「30年ぶりの2.9%」は、財務省の金利の表では7月15日までに届いていない
テーマ:国会・経済|出来事:2026年7月15日(党首討論)|最終更新:2026年10月31日
国会の発言は、国会会議録の字です(# は会議録の発言番号)。数字は、日本銀行・財務省・厚生労働省・総務省が公表した資料で照らしました。足し算・掛け算・比べは、このページで計算しました。
要点
- 竹谷とし子議員(公明党)の「六月は昨年よりも約三割も上昇」は、日本銀行の輸入物価指数の数と合います。2026年6月の輸入物価指数(円ベース)は、前の年の同じ月より29.7%上がりました。ただ、ドルなど契約した通貨で見た指数の上がり方は17.8%です。円で見た方が大きく上がっています。(資料01・02)
- 「三十年ぶりの二・九%」は、財務省の国債金利情報の10年の金利とは合いません。財務省の表では、7月15日までの2026年の最高は7月9日の2.866%で、7月15日は2.697%でした。2.866%以上になったのは1997年5月28日(2.869%)以来です。この表で2.9%以上になったのは8月17日(2.919%)で、その前は1996年10月18日(2.904%)でした。竹谷議員は銘柄と時点を挙げずに述べたので、ここで比べたのは財務省の表の数です。市場で取引された銘柄の利回り(日中の高値もある)は、作り方の違う別の数です。(資料01・03)
- 「十年物、例えば二・七%」「一兆円発行すると年間二百七十億円」は、財務省の入札の結果と計算で合います。7月2日に入札した10年利付国債(第383回)の表面利率は年2.7%です。1兆円×2.7%=270億円です。(資料01・04)
- 高市首相の「インフレ率、一・五」「実質賃金上昇率一・七」は、討論の時点で最新だった5月分の数と合います。厚生労働省の毎月勤労統計(5月分速報・7月7日公表)では、消費者物価指数(総合)の上がり方は1.5%、これで割った実質賃金は1.7%増です。同じ資料のもう1つの実質賃金(持家の帰属家賃を除く総合で割った物)は1.4%増です。(資料01・05・06)
根拠
数字の照らし合わせ
| 討論で出た数字 | 誰の数字か | 公表の数 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 輸入物価 6月は昨年より「約三割」上昇 | 竹谷議員 #50 | 2026年6月の輸入物価指数(円ベース)前年比 +29.7%。契約通貨ベースは +17.8% | 資料02 |
| 「二・五兆の予備費」 | 竹谷議員 #50 | 6月5日成立の補正予算(第1号)の中東情勢等対応予備費 2兆5,000億円(財務省「令和8年度一般会計補正予算(第1号)フレーム」https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2026/hosei260603a.pdf)。補正予算の中身は記事「令和8年度予算のPB黒字1.3兆円_6月の補正後は1.8兆円の赤字」 | 財務省の資料 |
| 長期金利「三十年ぶりの二・九%」 | 竹谷議員 #52 | 財務省の10年の金利。7月15日 2.697%。2026年1月1日〜7月15日の最高は7月9日の2.866% | 資料03 |
| 10年物「二・七%」 | 竹谷議員 #52 | 10年利付国債(第383回・7月2日入札・7月3日発行)の表面利率 年2.7% | 資料04 |
| 1兆円で年「二百七十億円」 | 竹谷議員 #52 | 1兆円×2.7%=270億円(このページの計算) | 資料04 |
| インフレ率「一・五」 | 高市首相 #51 | 消費者物価指数(総合)の2026年5月の前年同月比 1.5% | 資料05・06 |
| 実質賃金上昇率「一・七」 | 高市首相 #51 | 2026年5月分速報の実質賃金(総合で割った物)1.7%増。持家の帰属家賃を除く総合で割った物は1.4%増 | 資料05 |
財務省の表の10年の金利(%)
| 日付 | 10年の金利 | 出典 |
|---|---|---|
| 1996年10月18日 | 2.904 | 資料03 |
| 1997年5月28日 | 2.869 | 資料03 |
| 2026年7月9日 | 2.866 | 資料03 |
| 2026年7月14日 | 2.713 | 資料03 |
| 2026年7月15日(党首討論の日) | 2.697 | 資料03 |
| 2026年8月17日 | 2.919 | 資料03 |
| 2026年10月7日 | 3.111 | 資料03 |
このページの数え(資料03 の全期間の表から)
- 2026年に入ってから7月15日までの最高は、7月9日の2.866%です
- 2.866%以上の日は、2026年より前では1997年5月28日(2.869%)が最後です。約29年ぶりになります
- 2.9%以上の日は、2026年より前では1996年10月18日(2.904%)が最後で、2026年では8月17日(2.919%)が最初です。8月17日から見ると、約30年ぶりになります
- 2026年の最高は、10月22日までのデータで10月7日の3.111%です
比べ方の注意
- 財務省の国債金利情報は、財務省の説明では「流通市場における固定利付国債の実勢価格に基づいて算出した主要年限毎の半年複利金利」です(資料03)。報道でよく使われる「新発10年物国債の利回り」(市場で取引された銘柄の利回り。日中の高値もある)とは、作り方が違います。竹谷議員は、どの数かを挙げずに「三十年ぶりの二・九%」と述べました(#52)
- 輸入物価指数の「円ベース」は、円に直した値段で作った指数です。「契約通貨ベース」は、ドルなど取引した通貨のままの値段で作った指数です。日本銀行の表では、6月の円ベースの上がり方(+29.7%)は契約通貨ベース(+17.8%)より大きくなっています(資料02)
- 1兆円で年270億円は、表面利率2.7%で1年分の利息を出した数です。売られた値段(平均の利回りは2.729%)や、借り換えの分は入っていません(資料04)
- 毎月勤労統計の5月分は速報の数です。厚生労働省は「速報値は確報で改訂される場合がある」と注をつけています(資料05)
資料
| 番号 | 資料 | 種類 | 確かめた日 |
|---|---|---|---|
| 01 | 国会会議録 国家基本政策委員会合同審査会 2026年7月15日 #50〜#53・#55 https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122124293X00220260715/52 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 02 | 日本銀行 調査統計局「企業物価指数(2026年6月速報)」2026年7月10日(PDF 1ページ) https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi2606.pdf | 公式資料 | 2026-10-25(「輸入物価指数は、契約通貨ベースで前月比+0.1%、円ベースで同+1.3%(前年比+29.7%)」。表の6月の契約通貨ベースの前年比は17.8) |
| 03 | 財務省「国債金利情報」過去の金利情報(昭和49年〜)の CSV と、令和8年10月分の CSV https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/data/jgbcm_all.csv https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/jgbcm.csv ページ https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/index.htm 説明 https://www.mof.go.jp/faq/jgbs/04ha.htm | 公式資料 | 2026-10-25(全期間の CSV は令和8年9月30日まで、10月分の CSV は10月22日まで。10年の列を読み、日付ごとの最高と、ある値以上の日を数えた) |
| 04 | 財務省「10年利付国債(第383回)の入札結果」令和8年7月2日 https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20260702.htm | 公式資料 | 2026-10-25(表面利率 年2.7パーセント・発行日 令和8年7月3日・募入平均利回り 2.729%) |
| 05 | 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年5月分結果速報」2026年7月7日(PDF 1ページの概要) https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2605p/dl/pdf2605p.pdf | 公式資料 | 2026-10-25 |
| 06 | 総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)9月分」2026年10月23日(PDF 1ページの表1) https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf | 公式資料 | 2026-10-25(2025年基準に改めた後の表で、2026年5月の総合の前年同月比は1.5) |
国会のやりとり
字は国会会議録のとおりです。[中略]の所は、会議録の字を省きました。
2026年7月15日 国家基本政策委員会合同審査会(党首討論)(資料01)
竹谷とし子(公明党)#50
[中略]一ドル百六十二円の歴史的な円安が続いています。日本の通貨の価値が大幅に下がり続けています。これによって、日本の輸入物価が急上昇し、六月は昨年よりも約三割も上昇をしております。[中略]
六月五日に補正予算が成立しましたが、二・五兆の予備費、これらを直ちに使って、この家計の負担軽減、中小企業の支援をすべきであると考えます。[中略]いかがでしょうか。
高市早苗 内閣総理大臣 #51
為替というのは、様々な要因、これを背景に市場において決まるものでございます。[中略]
それから、物価高対策、おっしゃいましたが、これまで様々な対策を打ってきて、今、G7で最も低いインフレ率、一・五ですね。それから、G7で最も高い実質賃金上昇率ですよ。この物価高が、G7でインフレ率が最も低いという状況の中で実質賃金上昇率一・七ですよね。[中略]
竹谷とし子(公明党)#52
長期金利の上昇も深刻であります。三十年ぶりの二・九%。
[中略]国債の十年物、例えば二・七%のもの、今募集しているものがあるかと思いますけれども、これは一兆円発行すると年間二百七十億円。三年後に使うものも今年発行すると、その三倍かかるというわけでございます。[中略]
高市早苗 内閣総理大臣 #53
様々なお尋ねがありましたけれども、とにかく経済が強くなって成長しなければ、実質的にはそういうお困りの方々をお助けすることもできないわけです。ですから、今回、しっかりと財政の持続可能性という指標で確認をしながら……
高市早苗 内閣総理大臣 #55
財政の持続可能性というのは、IMFでも世銀でもOECDでもEUでも使われていますよ。[中略]
会派の名前は、会議録の会派の欄のとおりです。
経過
| 日付 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2026年7月2日 | 10年利付国債(第383回)の入札。表面利率は年2.7% | 資料04 |
| 2026年7月7日 | 厚生労働省が毎月勤労統計の5月分速報を公表(実質賃金1.7%増・総合で割った物) | 資料05 |
| 2026年7月9日 | 財務省の表の10年の金利が2.866%(7月15日までの2026年の最高) | 資料03 |
| 2026年7月10日 | 日本銀行が企業物価指数の6月速報を公表(輸入物価 円ベース前年比+29.7%) | 資料02 |
| 2026年7月15日 | 党首討論。竹谷議員が輸入物価と長期金利を挙げ、高市首相がインフレ率と実質賃金を挙げた | 資料01 |
| 2026年8月17日 | 財務省の表の10年の金利が2.919%。2.9%以上は1996年10月18日以来 | 資料03 |
訂正の記録
なし
確かめた所と読むときの注意
確かめた所
- 国会の字は、すべて国会会議録検索システムの API で取った本文と照らしました(2026年10月25日)。会派の名前も会議録の欄のとおりです
- 輸入物価の前年比は、日本銀行の6月速報の PDF(資料02)を開いて確かめました
- 10年の金利は、財務省の全期間の CSV(資料03)を取り、10年の列で日付ごとの値を数えました
- 10年利付国債の表面利率は、財務省の入札結果のページ(資料04)で確かめました
- 実質賃金と消費者物価指数の5月の数は、厚生労働省の5月分速報(資料05)で確かめました。消費者物価指数は、総務省の2025年基準の表(資料06)でも5月が1.5%であることを確かめました
読むときの注意
- 長期金利の比べは、財務省の国債金利情報の10年の金利(資料03)によります。市場で取引された銘柄の利回り(日本相互証券など)は、作り方の違う別の数です
