成年後見の民法改正 「後見」と「保佐」をなくし「補助」にまとめる 必要がなくなれば家庭裁判所が取り消せる 法務局で保管する「保管証書遺言」も新設

テーマ:国会・暮らし|出来事:2026年4月3日(法律案の提出)〜2026年5月26日(衆議院で可決)〜2026年6月17日(参議院で可決・成立)〜2026年6月24日(公布)|最終更新:2026年10月31日

法律の中身は、衆議院のページに載っている法律案の本文と、法務大臣の趣旨説明(国会会議録)の字です。国会の発言は、国会会議録の字です(# は会議録の発言番号)。会派の賛否は、衆議院の議案のページと、参議院の本会議の投票結果のページの記録のとおりです。

要点

  1. 成年後見制度の3つの類型のうち、「後見」と「保佐」をなくし、判断する能力が不十分な人はすべて「補助」の対象にします。家庭裁判所は、必要があるときに、特定の法律行為について補助人に代理権を与えたり、補助人の同意が要る行為を決めたりします。必要がなくなったと認めるときは、審判を取り消せます。(資料01・資料05 #2)
  2. 判断する能力を欠く常況にある人には、「特定補助人」を付けることができます。本人がした法定の重要な財産上の行為を取り消す権限などを持つ補助人です。法務省の民事局長は、特定補助人の財産の保存行為の権限は「本人の全ての財産がその対象となります」と答えました。(資料05 #2・資料07 #119)
  3. 遺言には、電子的な記録でも作れて法務局が保管する「保管証書遺言」が加わります。遺言者が遺言書保管官の前で全文を口述する方式です。自筆証書遺言などの押印の要件はなくします。(資料01・資料05 #2)
  4. 衆議院は2026年5月26日、参議院は6月17日に可決しました。参議院は押しボタンの投票で賛成221・反対20でした。6月24日に法律第45号として公布され、施行は公布から2年6月を超えない範囲で政令で定める日です。(資料01・02・03・資料06 #38)

根拠

法律の中身(法律案の本文と法務大臣の趣旨説明)

項目中身出典
民法 第7条(補助開始の審判)精神上の理由により事理を弁識する能力が不十分である者について、家庭裁判所は補助開始の審判をすることができる。後見・保佐の条(第7条〜第19条)をこの形に置き換える資料01
民法 第9条(補助人の同意)預貯金の払戻し、借財・保証、不動産など重要な財産の得喪、訴訟行為、贈与などのうち、家庭裁判所が定める行為は補助人の同意が要る資料01
特定補助人事理を弁識する能力を欠く常況にある者のため、法定の重要な財産上の行為を取り消す権限などを持つ補助人を付ける審判ができる資料05 #2
審判の取消し・補助人の解任必要がなくなったと認めるときは各審判を取り消せる。本人の利益のため特に必要があるときは補助人を解任できる。補助人は本人の意向を把握するようにする資料05 #2
民法 第968条の2(保管証書遺言・新)遺言の全文を書いた(電磁的記録でもよい)証書に署名などをし、遺言書保管官の前で全文を口述する。法務局で保管しなければ効力を生じない資料01
押印の要件自筆証書遺言等の遺言者の押印要件をなくす資料05 #2
任意後見明らかに監督の必要がないときは任意後見監督人を選ばないことができる。補助開始で任意後見契約が終わる、という規定を削る資料05 #2
経過措置施行前に後見・保佐開始の審判を受けた人は原則として従前の例。請求により、新しい補助開始の審判や、後見・保佐開始の審判の取消しができる資料05 #2
附則第1条(施行)公布の日から2年6月を超えない範囲で政令で定める日(一部は別の日)資料01

比べ方の注意

会派の賛否(記録にある粒度のまま)

衆議院 本会議 2026年5月26日(資料02)

欄記録の字
会派態度多数
賛成会派自由民主党・無所属の会; 中道改革連合・無所属; 日本維新の会; 国民民主党・無所属クラブ; チームみらい; 日本共産党
反対会派参政党

参議院 本会議 2026年6月17日(押しボタンの投票。投票総数241・賛成221・反対20)(資料03)

会派(人数)賛成反対
自由民主党・無所属の会(101)970
立憲民主・無所属(40)400
国民民主党・新緑風会(25)250
公明党(21)210
日本維新の会(19)190
参政党(15)015
日本共産党(7)70
れいわ新選組(5)05
日本保守党(2)10
沖縄の風(2)20
チームみらい・無所属の会(2)20
社会民主党(2)20
各派に属しない議員(6)50

賛成と反対の合計が会派の人数より少ないのは、投票しなかった議員の分です。賛成の合計221・反対の合計20は、議長の報告(資料06 #41)と一致します(このページの足し算)。議長は、整備法(閣法44)と一括で採決しました。

資料

番号資料種類確かめた日
01衆議院「閣法 第221回国会 43 民法等の一部を改正する法律案」提出時法律案
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g22109043.htm
公式資料2026-10-25(民法 第7条〜第9条・第968条の2・附則第1条を読んだ)
02衆議院 同法律案の議案審議経過情報
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DE2576.htm
公式資料2026-10-25(受理 4月3日・付託 5月15日 法務委員会・審査終了 5月22日 可決・本会議 5月26日 可決・参議院 6月17日 可決・公布 6月24日 法律第45号)
03参議院 同法律案の審議経過と本会議の投票結果
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221080221043.htm
https://www.sangiin.go.jp/japanese/touhyoulist/221/221-0617-v005.htm
公式資料2026-10-25(付託 6月1日 法務委員会・委員会の議決 6月16日・会派ごとの票の数)
04国会会議録 衆議院 本会議 2026年5月26日 #18(法務委員長の報告)
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122105254X02020260526/18
会議録2026-10-25
05国会会議録 衆議院 法務委員会 2026年5月15日 #2(平口法務大臣の趣旨説明)
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122105206X00920260515/2
会議録2026-10-25
06国会会議録 参議院 本会議 2026年6月17日 #38(法務委員長の報告)・#39〜#41(一括の採決と投票の結果)
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115254X02220260617/38
会議録2026-10-25
07国会会議録 参議院 法務委員会 2026年6月16日 #45・#46(牧山ひろえ議員と法務省 民事局長)・#118・#119(安達悠司議員と同)
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115206X01520260616/46
会議録2026-10-25

国会のやりとり

字は国会会議録のとおりです。[中略]の所は、会議録の字を省きました。

2026年5月15日 衆議院 法務委員会(趣旨説明)(資料05)

平口洋 法務大臣 #2

[中略]民法の一部を改正し、後見及び保佐の制度を廃止し、精神上の理由により事理を弁識する能力が不十分である者の全てを補助の制度の対象とした上で、家庭裁判所が、必要があると認めるときは、補助開始の審判を受けた者のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判等をすることができることとするほか[中略]

2026年6月16日 参議院 法務委員会(資料07)

牧山ひろえ 議員(立憲民主・無所属)#45

[中略]今回の改正は、任意後見優先の原則そのものを廃止する趣旨ではなく、本人保護の観点から、必要な場合に法定後見との適切な併用や調整を可能とするものであるとの理解でよろしいでしょうか。[中略]

松井信憲 法務省民事局長 #46

[中略]民法等改正法案でもこの規定を維持しており、任意後見制度が法定後見制度に優先する原則を廃止するものではございません。[中略]
そこで、民法等改正法案では、任意後見契約の効力が生じた後に補助が開始されたときでも任意後見契約が終了しないこととして、任意後見制度と補助の制度の併存を認めることとしたものであります。

安達悠司 議員(参政党)#118

[中略]ここで指摘したいのは、これは後見制度の規制緩和であるということです。つまり、本人にとって、規制緩和に対してセーフティーネットは大丈夫ですかと、規制緩和しても本人の財産はちゃんと守れるのですかという問題が一点あります。[中略]
そこでお尋ねします。特定補助人のこの保存行為の権限の対象は本人の財産全部に及ぶのでしょうか。

松井信憲 法務省民事局長 #119

特定補助人が有する本人の財産に関する保存行為をする権限につきましては、本人の全ての財産がその対象となります。

2026年6月17日 参議院 本会議(資料06)

伊藤孝江 法務委員長(公明党)委員長の報告 #38

[中略]現行の成年後見制度の問題点と見直しの趣旨、補助制度の利用終了後の地域における本人支援のための体制整備、事理弁識能力を欠く常況にある者の保護の在り方、保管証書遺言制度において他人が遺言者に成り済ますことを防止するための対策等について質疑が行われましたが[中略]

会派の名前は、会議録の会派の欄のとおりです。

経過

日付出来事出典
2026年4月3日内閣が衆議院に提出(受理)資料02
2026年5月15日衆議院 法務委員会に付託。法務大臣の趣旨説明資料02・04・05
2026年5月22日衆議院 法務委員会で可決(附帯決議あり)資料02・04
2026年5月26日衆議院 本会議で可決資料02・04
2026年6月1日参議院 法務委員会に付託資料03
2026年6月16日参議院 法務委員会で可決(附帯決議あり)資料03・06
2026年6月17日参議院 本会議で可決(賛成221・反対20)。成立資料03・06
2026年6月24日公布(法律第45号)資料02

訂正の記録

なし

確かめた所と読むときの注意

確かめた所

読むときの注意

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