労災保険法の改正 遺族補償年金で夫にだけあった要件をなくし、遺族1人の年金は一律175日分に 判断の難しい病気は請求の時効を5年に
テーマ:国会・労働|出来事:2026年4月7日(法律案の提出)〜2026年6月2日(衆議院で可決)〜2026年7月10日(参議院で可決・成立)〜2026年7月17日(公布)|最終更新:2026年10月31日
法律の中身は、衆議院のページに載っている法律案の本文の字です。国会の発言は、国会会議録の字です(# は会議録の発言番号)。会派の賛否は、衆議院の議案のページと、参議院の本会議の投票結果のページの記録のとおりです。
要点
- 労災保険の遺族補償年金で、夫にだけあった支給の要件をなくしました。いまの法律では、夫が受けるには、労働者が亡くなったとき「六十歳以上」などの要件がありました。妻にはこの要件がありません。改正で、その要件の号から「夫」の字を削ります。厚生労働大臣は「夫にのみ課せられた支給要件を撤廃する」と説明しました。(資料01・資料08・資料04 #212)
- 遺族が1人のときの年金額は、一律に給付基礎日額の175日分になります。改正の前は153日分で、55歳以上の妻か障害の状態にある妻だけが175日分でした。(資料01)
- 労災に当たるかの判断が難しい病気として政令で定めるものは、請求の時効を2年から5年に延ばします。小規模な個人経営の農林水産業で任意加入だった労災保険は、適用事業にします(公布から5年以内の政令で定める日)。一人親方などが入る特別加入団体の要件も法律に書きました。(資料01・資料04 #212)
- 衆議院は2026年6月2日に起立多数、参議院は7月10日に押しボタンの投票で賛成235・反対5で可決し、成立しました。衆議院の議案のページでは反対会派の欄は空です。施行は主に2027年4月1日です。(資料02・03・資料07 #22・資料01)
根拠
法律の中身(法律案の本文)
| 条(改正後の労災保険法など) | 中身 | 出典 |
|---|---|---|
| 第16条の2第1項 | 遺族補償年金を受けられる遺族のただし書の「妻…以外の者」を「配偶者以外の者」に改め、第1号・第4号から「夫」の字を削る | 資料01 |
| 第16条の3第4項・別表第一 | 遺族1人の年金額の「一五三日分。ただし、五十五歳以上の妻又は…障害の状態にある妻にあつては、…一七五日分」を「一七五日分」に改める。妻が55歳に達したときなどに額を改定する第16条の3第4項を削る | 資料01・08 |
| 第42条 | 判断の難しい病気として政令で定めるものに係る給付は、2年の時効を5年とする | 資料01 |
| 第35条 | 特別加入団体の要件を厚生労働省令で定め、政府は改善命令ができる | 資料01 |
| 労働基準法の改正(第4条) | 災害補償の請求権も、判断の難しい病気として政令で定めるものは同じく扱う | 資料01 |
| 第5条(昭和44年の改正法の附則第12条を削る) | 小規模な個人経営の農林水産業の暫定任意適用の取扱いを廃止する | 資料01・資料04 #212 |
| 附則第1条 | 2027年4月1日から施行。第5条などは、公布から5年を超えない範囲で政令で定める日 | 資料01 |
| 附則第12条 | 施行後5年を経過したとき、施行の状況を検討する | 資料01 |
法律案の理由の欄の書き出しは、「就業構造の変化や働き方の多様化等を踏まえ」です(資料01)。
同じ論点の別の法律
- 公務員の災害補償の遺族補償年金の男女差は、第222回国会に出された改正案があります。別の記事「国家公務員災害補償法の改正案_夫だけにある55歳の要件をなくす」と「地方公務員災害補償法の改正案_遺族補償年金の男女差をなくす」で確かめています
会派の賛否(記録にある粒度のまま)
衆議院 本会議 2026年6月2日(起立による採決・起立多数)(資料02・資料06 #26・#27)
| 賛成会派(記録の字) | 反対会派(記録の字) |
|---|---|
| 自由民主党・無所属の会; 中道改革連合・無所属; 日本維新の会; 国民民主党・無所属クラブ; 参政党; チームみらい; 日本共産党 | (空欄) |
衆議院の厚生労働委員会の採決は「起立総員」でした(資料05 #202)。委員長は本会議で「全会一致」と報告しています(資料06 #25)。本会議の結果は「起立多数」です(資料06 #27)。
参議院 本会議 2026年7月10日(押しボタンの投票。投票総数240・賛成235・反対5)(資料03)
| 会派(人数) | 賛成 | 反対 |
|---|---|---|
| 自由民主党・無所属の会(101) | 97 | 0 |
| 立憲民主・無所属(40) | 39 | 0 |
| 国民民主党・新緑風会(25) | 24 | 0 |
| 公明党(21) | 21 | 0 |
| 日本維新の会(19) | 19 | 0 |
| 参政党(15) | 15 | 0 |
| 日本共産党(7) | 7 | 0 |
| れいわ新選組(5) | 0 | 5 |
| 日本保守党(2) | 2 | 0 |
| 沖縄の風(2) | 2 | 0 |
| チームみらい・無所属の会(2) | 2 | 0 |
| 社会民主党(2) | 2 | 0 |
| 各派に属しない議員(6) | 5 | 0 |
賛成と反対の合計が会派の人数より少ないのは、投票しなかった議員の分です。賛成の合計235・反対の合計5は、議長の報告(資料07 #22)と一致します(このページの足し算)。
資料
| 番号 | 資料 | 種類 | 確かめた日 |
|---|---|---|---|
| 01 | 衆議院「閣法 第221回国会 56 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案」提出時法律案 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g22109056.htm | 公式資料 | 2026-10-25(第1条の第16条の2〜第42条・別表、第4条・第5条、附則第1条・第12条、理由を読んだ) |
| 02 | 衆議院 同法律案の議案審議経過情報 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DE271A.htm | 公式資料 | 2026-10-25(受理 4月7日・付託 5月26日 厚生労働委員会・審査終了 5月29日 可決・本会議 6月2日 可決・参議院 7月10日 可決・公布 7月17日 法律第60号) |
| 03 | 参議院 同法律案の審議経過と本会議の投票結果 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221080221056.htm https://www.sangiin.go.jp/japanese/touhyoulist/221/221-0710-v003.htm | 公式資料 | 2026-10-25 |
| 04 | 国会会議録 衆議院 厚生労働委員会 2026年5月27日 #212(上野厚生労働大臣の趣旨説明) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122104260X01220260527/212 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 05 | 国会会議録 衆議院 厚生労働委員会 2026年5月29日 #201・#202(採決) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122104260X01320260529/202 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 06 | 国会会議録 衆議院 本会議 2026年6月2日 #25(厚生労働委員長の報告)・#26・#27(採決) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122105254X02120260602/25 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 07 | 国会会議録 参議院 本会議 2026年7月10日 #19(厚生労働委員長の報告)・#22(投票の結果)/参議院 厚生労働委員会 2026年7月9日 #219(天畠大輔議員の反対の討論) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115254X02720260710/22 https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122114260X01720260709/219 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 08 | 労働者災害補償保険法 第16条の2・第16条の3(e-Gov の法令 API・2026年7月17日施行の版。改正の前の字が残っている版) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000050 | 法令 | 2026-10-25(第16条の2第1項第1号「夫…、父母又は祖父母については、六十歳以上であること」、第16条の3第4項「当該妻が…五十五歳に達したとき」を読んだ) |
国会のやりとり
字は国会会議録のとおりです。[中略]の所は、会議録の字を省きました。
2026年5月27日 衆議院 厚生労働委員会(趣旨説明)(資料04)
上野賢一郎 厚生労働大臣 #212
[中略]第一に、労災保険の遺族補償年金等について、夫にのみ課せられた支給要件を撤廃するとともに、遺族が一人の場合の年金額を、一律に給付基礎日額の百七十五日分とします。
第二に、現在二年とされている労災保険給付請求権等の消滅時効期間について、疾病の性質上、災害補償の事由に該当するかどうか等を容易に判断できないものに関しては、これを五年に延長します。
第三に、小規模の個人経営の農林水産事業に関する労災保険の暫定任意適用事業としての取扱いを廃止し、労災保険の適用事業とします。[中略]
2026年7月9日 参議院 厚生労働委員会(反対の討論)(資料07)
天畠大輔 議員(れいわ新選組)#219
[中略]改正案には、遺族補償年金の支給要件の見直しによる男女差別の撤廃や、一部の小規模な個人経営の農林水産業で任意加入だった労災保険を強制加入にし、作業者の保護を強化したことなど、評価できる点も含まれています。
一方で、法案の目的に比べて不十分な点が幾つも残されています。[中略]しかし、改正案は二年から五年への延長にとどまっています。消滅時効の延長の対象が特定の疾病に限られていることも問題です。[中略]
衆議院の委員会と本会議で、この法律案への討論は会議録にありません(資料05 #201・資料06 #25)。
会派の名前は、会議録の会派の欄のとおりです。
経過
| 日付 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2026年4月7日 | 内閣が衆議院に提出(受理) | 資料02 |
| 2026年5月26日 | 衆議院 厚生労働委員会に付託 | 資料02 |
| 2026年5月27日 | 衆議院 厚生労働委員会で大臣の趣旨説明 | 資料04 |
| 2026年5月29日 | 衆議院 厚生労働委員会で質疑・採決。可決(起立総員・附帯決議あり) | 資料05 |
| 2026年6月2日 | 衆議院 本会議で可決(起立多数) | 資料06 |
| 2026年7月6日 | 参議院 厚生労働委員会に付託 | 資料03 |
| 2026年7月9日 | 参議院 厚生労働委員会で可決(多数・附帯決議あり) | 資料03・資料07 #19 |
| 2026年7月10日 | 参議院 本会議で可決(賛成235・反対5)。成立 | 資料03・07 |
| 2026年7月17日 | 公布(法律第60号) | 資料02 |
| 2027年4月1日 | 施行(暫定任意適用の廃止などは、公布から5年以内の政令で定める日) | 資料01 |
訂正の記録
なし
確かめた所と読むときの注意
確かめた所
- 法律の中身(遺族の要件・年金額・時効・特別加入団体・暫定任意適用の廃止・施行日・5年後の検討)は、衆議院のページの法律案の本文(資料01)を読んで確かめました(2026年10月25日)。改正の前の夫の「六十歳以上」の要件は、e-Gov の法令(資料08)で確かめました。衆議院の議案のページでは、衆参とも修正はありません(資料02)
- 提出・付託・議決・公布の日と、衆議院の会派の欄は、衆議院の議案のページ(資料02)で確かめました
- 参議院の会派ごとの票は、参議院の投票結果のページ(資料03)で確かめ、議長の報告の数(資料07 #22)と合うことを足し算で確かめました
- 国会の字は、すべて国会会議録検索システムの API で取った本文と照らしました
