抗菌薬の特定重要物資 高市氏は2023年に担当大臣として「十一の物資」の指定を説明 2026年に総理として「いまだに抗菌薬しか厚生労働省から来ない」
テーマ:経済安全保障・医療|出来事:2022年12月23日(政令の施行)〜2026年4月9日(衆院本会議の答弁)|最終更新:2026年10月31日
国会の発言は、国会会議録の字です(# は会議録の発言番号)。特定重要物資の一覧は、e-Gov の法令 API で、政令の版ごとの本文を取って確かめました。
要点
- 2023年2月10日、高市経済安保担当大臣(当時)は、「抗菌薬など、十一の物資を特定重要物資に指定しました」と答えました。政令の最初の版(2022年12月23日施行)を見ると、第1条に11の物資が並び、その1番目が「抗菌性物質製剤」です。大臣は、抗菌薬の原材料・原薬の国内製造設備や備蓄体制への支援を挙げました。(資料01・03)
- 2026年2月27日、高市総理は「いまだに抗菌薬しか厚生労働省から来ないという状況」と答えました。伊佐進一議員が、一か国に原薬を頼っている薬は抗菌薬のほかにもあり(麻酔薬や透析の薬を例に)、対象を広げてほしいと求めたのに対する答弁です。総理は、大臣のときに「ほかの薬も困っているものがあるはずだという指摘を何度もいたしました」と述べ、厚生労働大臣にサプライチェーン調査をしっかりやってもらい、「真に必要なものを指定していきたい」としました。(資料04)
- 政令の一覧は、いまは16の物資です。2025年12月24日の改正で、人工呼吸器・無人航空機・人工衛星・ロケットの部品などが加わりました。一覧の中で薬の名前は「抗菌性物質製剤」の1つです。2026年4月9日、総理は「一部の抗菌薬について」特定重要物資に指定し、ほかの医薬品は原材料などの供給元の複線化などを進めていると答えています。(資料01・05)
根拠
特定重要物資の一覧の検算(政令 第1条・e-Gov の版ごと)
| 政令の版(施行日) | 物資の数 | 中身 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2022年12月23日(最初の版) | 11 | 一 抗菌性物質製剤/二 肥料/三 永久磁石/四 工作機械及び産業用ロボット/五 航空機の部品/六 半導体素子及び集積回路/七 蓄電池/八 クラウドのプログラム(このページの呼び方。条文は「インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機…を他人の情報処理の用に供するシステムに用いるプログラム」)/九 可燃性天然ガス/十 金属鉱産物/十一 船舶の部品 | 資料01 |
| 2025年4月1日(途中の版の1つ) | 12 | 上の11に「十二 コンデンサー及びろ波器」 | 資料01 |
| 2025年12月24日 | 16 | 十二を「コンデンサー、ろ波器及び磁気センサー」に。「十三 人工呼吸器」「十四 無人航空機」「十五 人工衛星」「十六 ロケットの部品」 | 資料01 |
| 2026年6月1日(いまの版) | 16 | 2025年12月24日の版と同じ16の物資 | 資料01 |
- 表は、版ごとの本文を取って並べたものです
- 大臣は「昨年十二月二十日に…指定しました」と答えています。e-Gov では政令の最初の版の公布・施行は2022年12月23日です
比べ方の注意
- 伊佐議員が示した「五百五十三億円」(抗菌薬の国内の製造体制の支援)は、議員の資料の数です
- 「抗菌薬しか厚生労働省から来ない」は、総理の答弁の言葉です
- 人工呼吸器は薬ではなく機器です
資料
| 番号 | 資料 | 種類 | 確かめた日 |
|---|---|---|---|
| 01 | 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律施行令(令和4年政令第394号)第1条(e-Gov 法令検索。2022年12月23日・2025年4月1日・2025年12月24日・2026年6月1日施行の各版) https://laws.e-gov.go.jp/law/504CO0000000394 | 法令 | 2026-10-25(法令 API の版の一覧と、版ごとの本文で第1条を読んだ) |
| 02 | 国会会議録 参議院 予算委員会 2024年3月8日 #44(高市大臣) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121315261X00720240308/44 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 03 | 国会会議録 衆議院 内閣委員会 2023年2月10日 #336・#337(浅野哲議員の質問と高市大臣の答弁) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121104889X00220230210/337 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 04 | 国会会議録 衆議院 予算委員会 2026年2月27日 #249・#250(伊佐進一議員の質問と高市総理の答弁) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122105261X00220260227/250 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 05 | 国会会議録 衆議院 本会議 2026年4月9日 #23・#24(豊田真由子議員の質問と高市総理の答弁) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122105254X01120260409/24 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 06 | 国会会議録検索システム https://kokkai.ndl.go.jp/ | 会議録 | 2026-10-25 に、発言の API で発言者「高市早苗」・語「抗菌薬」(期間の指定なし)を検索して5件(2023年2月10日・2024年3月8日・2026年2月27日・3月3日・4月9日)。2026年3月3日の1件は、風邪への抗菌薬の処方についての答弁で、このページの論点とは別の話 |
国会のやりとり
字は国会会議録のとおりです。[中略]の所は、会議録の字を省きました。
2023年2月10日 衆議院 内閣委員会(資料03)
浅野哲(国民民主党・無所属クラブ)質問 #336
[中略]このように、特定の国に大きく依存している物資について、今後どのように我が国がその資源を確保していくことを考えているのか伺いたいと思います。[中略]
高市早苗 内閣府特命担当大臣(経済安全保障など・当時)答弁 #337
昨年この委員会で御審議いただいて五月に成立した経済安全保障推進法に基づきまして、国民の生存や国民生活、経済活動にとっての重要性や外部依存性といった要件を満たす物資を特定重要物資に指定して、サプライチェーンの強靱化を図るべく作業を進めております。
昨年十二月二十日に、レアアースを含む重要鉱物、肥料、また抗菌薬など、十一の物資を特定重要物資に指定しました。この具体的な対応につきましては、各物資の所管大臣が安定供給確保を図るための取組方針において定めております。
[中略]そして、主要な肥料原料であるリン安と塩化カリの備蓄、また、抗菌薬の原材料及び原薬の国内製造設備の導入ですとか備蓄体制の整備といった、民間事業者による取組への支援を通じて特定重要物資の安定供給確保を図ることといたしております。
そのための予算につきましても、令和四年度第二次補正予算において一兆円を超える額が措置されたところですので、現在、支援開始に向けた手続をできる限り速やかに進めているところでございます。
2024年3月8日 参議院 予算委員会(資料02)
高市早苗 国務大臣(当時)#44
[中略]例えばという話でございますが、今中国から入らなくなっている、経済安全保障推進法のサプライチェーンの強靱化、ここで指定をしておりますベータラクタム系の抗菌薬など、こういったものは公開情報でございます。[中略]
2026年2月27日 衆議院 予算委員会(資料04)
伊佐進一(中道改革連合・無所属)質問 #249
[中略]高市総理がこれまで、経済安全保障、ずっと力を入れてくださっておりました。その中で、サプライチェーンの問題として、コロナの際に抗菌薬が枯渇した。これは、この原薬が中国一か国に依存していた、その製造ラインに問題があって大変な状況になったわけですが、これに対して、国内で製造できるようにということで、国内の製造体制構築支援、これは資料の十ですが、五百五十三億円つけていただいております。
ただ、今日申し上げたいのは、抗菌薬だけが対象になっています。一か国に原薬を依存しているものというのは結構あるんですよ。[中略]
[中略]抗菌薬以外のところでも是非この枠組みを使えるようにしていただきたい、拡大していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
高市早苗 内閣総理大臣 答弁 #250
経済安全保障担当大臣のときに、抗菌薬は指定をいたしました。そのときに私が申し上げたのは、ベータラクタム系の抗菌薬、あれが途絶して大変だったと。それは厚生労働省から来たんですけれども、いや、もうこれはずっとサプライチェーン調査を続けてくれ、ほかの薬も困っているものがあるはずだという指摘を何度もいたしましたが、いまだに抗菌薬しか厚生労働省から来ないという状況でございますので、厚生労働大臣にサプライチェーン調査をもっとしっかりとやっていただいて、真に必要なものを指定していきたい。これは小野田大臣の仕事ですが、指定をしてもらいたいと考えております。
2026年4月9日 衆議院 本会議(資料05)
高市早苗 内閣総理大臣 答弁 #24(豊田真由子議員(参政党)の質問に)
[中略]医薬品の安定供給に向けて、一部の抗菌薬について、経済安全保障推進法の特定重要物資に指定し、原薬の国内生産基盤強化を行うとともに、このほかの医薬品につきましても、原材料などの供給元の複線化などの取組を進めています。[中略]
会派の名前は、会議録の会派の欄のとおりです。2026年2月の答弁の「小野田大臣」は、小野田紀美氏を指しています。2026年7月の会議録の肩書は、経済安全保障を担当する内閣府特命担当大臣でした。
経過
| 日付 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2022年12月23日 | 政令の最初の版を施行。特定重要物資は11(1番目が抗菌性物質製剤) | 資料01 |
| 2023年2月10日 | 高市大臣が「十一の物資を特定重要物資に指定しました」と答弁 | 資料03 |
| 2024年3月8日 | 高市大臣が「ベータラクタム系の抗菌薬」を指定の例に挙げる | 資料02 |
| 2025年12月24日 | 政令の改正。特定重要物資は16に(人工呼吸器などが加わる) | 資料01 |
| 2026年2月27日 | 高市総理が「いまだに抗菌薬しか厚生労働省から来ない」と答弁 | 資料04 |
| 2026年4月9日 | 高市総理が「一部の抗菌薬について」指定し、ほかの医薬品は供給元の複線化などと答弁 | 資料05 |
| 2026年10月25日現在 | いまの版(2026年6月1日施行)でも、一覧の中の薬は抗菌性物質製剤の1つ | 資料01 |
訂正の記録
なし
関連する解説動画
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この論点を扱う回は、ロング011「高市早苗氏 大臣時代の国会答弁と、いま」。2026年10月25日の時点では、まだ構成の段階にあります。動画ができたら、ここに載せます。
確かめた所と読むときの注意
確かめた所
- 特定重要物資の一覧は、e-Gov の法令 API で、政令の版の一覧と版ごとの本文を取って確かめました(2026年10月25日)
- 国会の字は、すべて国会会議録検索システムの API で取った本文と照らしました(2026年10月25日)。会派の名前と肩書も会議録の欄のとおりです
読むときの注意
- どの抗菌薬が支援の対象かは、政令の字(「抗菌性物質製剤」)と答弁の言葉(「ベータラクタム系の抗菌薬」「一部の抗菌薬」)によります
