携帯電話不正利用防止法の改正 データ通信だけのSIMも契約のときに本人確認 1人の回線の数が総務省令の数を超えれば事業者は断れる
テーマ:国会・通信|出来事:2026年3月24日(法律案の提出)〜2026年5月14日(衆議院で可決)〜2026年5月22日(参議院で可決・成立)〜2026年5月29日(公布)|最終更新:2026年10月31日
法律の中身は、衆議院のページに載っている法律案の本文の字です。国会の発言は、国会会議録の字です(# は会議録の発言番号)。会派の賛否は、衆議院の議案のページと、参議院の本会議の投票結果のページの記録のとおりです。
要点
- 契約のときの本人確認の対象を、音声通話の携帯から、データ通信だけのサービスにも広げました。法律の題名も「携帯音声通信事業者による…」から「携帯通信事業者による…」に変わります。総務省の局長は、大手はデータ通信専用SIMでも自主的に本人確認をしているが、法律の監督の対象ではなかったと答えています。(資料01・資料05 #7)
- 1人が同時に使える端末の数が「総務省令で定める数」を超えるとき、事業者はその超える分の提供を断れます。数は法律に書いていません。局長は、業界団体の自主基準の「原則五回線」を「一つの目安」に、サービスの種類や用途に応じて決めると答えました。(資料01・資料05 #114・資料07 #49)
- 本人確認の方法の例は、「運転免許証の提示」から「個人番号カード(マイナンバーカード)に記録された署名用電子証明書の送信」に書き換わります。ほかに、日本に住居の無い外国人の確認の方法や、法人などの契約で窓口に来た人の権限の確認も定めました。(資料01・資料04 #142)
- 衆議院は2026年5月14日に起立多数、参議院は5月22日に押しボタンの投票で賛成237・反対5で可決し、成立しました。衆議院の議案のページでは反対会派の欄は空です。施行は公布から1年以内の政令で定める日です。(資料02・03・資料08 #37・資料01)
根拠
法律の中身(法律案の本文)
| 条(改正後の法律) | 中身 | 出典 |
|---|---|---|
| 題名・第2条 | 「携帯音声通信」を「携帯通信」に改め、「音声その他の音響を送り、伝え、又は受けるもの」に限る字を削る。データ通信だけの携帯のサービスも対象になる | 資料01 |
| 第3条第1項 | 契約のときの本人確認の方法の例を、「運転免許証の提示」から「個人番号カード…に記録された署名用電子証明書の送信」に改める(ほかの方法は総務省令) | 資料01 |
| 第3条第3項・第4項 | 契約の相手が国・地方公共団体・法人格の無い団体などで、窓口の人が相手と違うときは、その人の権限・地位も確かめる。相手や代表者は、本人確認の事項を偽ってはならない | 資料01 |
| 第8条第2項(新設) | 警察署長は、契約者の確認を事業者に求めるため必要なとき、電気通信事業者に照会して報告を求められる | 資料01 |
| 第11条第6号(新設) | 相手方(自然人)が同時に使える端末の数が総務省令で定める数を超えることとなる場合、事業者は超える部分の提供を拒める | 資料01 |
| 附則第1条 | 公布の日から1年を超えない範囲で政令で定める日から施行 | 資料01 |
法律案の理由の欄は、不正な利用の変化から書き出しています。字は「近年、携帯通信端末向けの電気通信役務の不正な利用が多様化・巧妙化していることに鑑み」です(資料01)。
政府が答えた数字
| 数字 | 中身 | 出典 |
|---|---|---|
| 約3,241億円 | 2025年の特殊詐欺の被害額 | 警察庁の審議官・資料05 #5 |
| 約1,827億円 | そのうちSNS型投資・ロマンス詐欺の被害額 | 同上 |
| 9割以上 | だます連絡の手段のうち、メッセージアプリなどデータ通信のサービスが使われた割合 | 同上 |
| 原則5回線 | 電気通信事業者協会の、音声通信の個人契約の上限の自主基準。省令の数を決める「一つの目安」 | 総務省の局長・資料05 #114・資料07 #49 |
比べ方の注意
- 「原則五回線」は音声通信の業界の自主基準です。局長は、家族の回線をまとめて契約する場合など、正当な理由に不当な拒否が生じないように決めると答えています(資料07 #49)
会派の賛否(記録にある粒度のまま)
衆議院 本会議 2026年5月14日(起立による採決・起立多数)(資料02・資料06 #4・#5)
| 賛成会派(記録の字) | 反対会派(記録の字) |
|---|---|
| 自由民主党・無所属の会; 中道改革連合・無所属; 日本維新の会; 国民民主党・無所属クラブ; 参政党; チームみらい; 日本共産党 | (空欄) |
衆議院の総務委員会の採決は「起立総員」でした(資料05 #180)。委員長は本会議で「全会一致」と報告しています(資料06 #3)。本会議の結果は「起立多数」です(資料06 #5)。
参議院 本会議 2026年5月22日(押しボタンの投票。投票総数242・賛成237・反対5)(資料03)
| 会派(人数) | 賛成 | 反対 |
|---|---|---|
| 自由民主党・無所属の会(101) | 98 | 0 |
| 立憲民主・無所属(40) | 40 | 0 |
| 国民民主党・新緑風会(25) | 25 | 0 |
| 公明党(21) | 21 | 0 |
| 日本維新の会(19) | 19 | 0 |
| 参政党(15) | 15 | 0 |
| 日本共産党(7) | 7 | 0 |
| れいわ新選組(5) | 0 | 4 |
| 日本保守党(2) | 2 | 0 |
| 沖縄の風(2) | 2 | 0 |
| チームみらい・無所属の会(2) | 2 | 0 |
| 社会民主党(2) | 2 | 0 |
| 各派に属しない議員(6) | 4 | 1 |
賛成と反対の合計が会派の人数より少ないのは、投票しなかった議員の分です。賛成の合計237・反対の合計5は、議長の報告(資料08 #37)と一致します(このページの足し算)。
資料
| 番号 | 資料 | 種類 | 確かめた日 |
|---|---|---|---|
| 01 | 衆議院「閣法 第221回国会 33 携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律の一部を改正する法律案」提出時法律案 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g22109033.htm | 公式資料 | 2026-10-25(題名・第2条・第3条・第8条・第11条・附則第1条・理由を読んだ) |
| 02 | 衆議院 同法律案の議案審議経過情報 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DE218A.htm | 公式資料 | 2026-10-25(受理 3月24日・付託 4月27日 総務委員会・審査終了 5月12日 可決・本会議 5月14日 可決・参議院 5月22日 可決・公布 5月29日 法律第25号) |
| 03 | 参議院 同法律案の審議経過と本会議の投票結果 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221080221033.htm https://www.sangiin.go.jp/japanese/touhyoulist/221/221-0522-v001.htm | 公式資料 | 2026-10-25 |
| 04 | 国会会議録 衆議院 総務委員会 2026年4月28日 #142(林総務大臣の趣旨説明) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122104601X00920260428/142 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 05 | 国会会議録 衆議院 総務委員会 2026年5月12日 #4〜#9(前川恵議員と警察庁・総務省)・#113・#114(許斐亮太郎議員と総務省)・#179・#180(採決) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122104601X01020260512/114 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 06 | 国会会議録 衆議院 本会議 2026年5月14日 #3(総務委員長の報告)・#4・#5(採決) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122105254X01820260514/3 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 07 | 国会会議録 参議院 総務委員会 2026年5月21日 #37・#38(岸真紀子議員と総務省)・#48・#49(奥村祥大議員と総務省) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122114601X00920260521/49 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 08 | 国会会議録 参議院 本会議 2026年5月22日 #34(総務委員長の報告)・#37(投票の結果) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115254X01520260522/37 | 会議録 | 2026-10-25 |
国会のやりとり
字は国会会議録のとおりです。[中略]の所は、会議録の字を省きました。
2026年5月12日 衆議院 総務委員会(資料05)
前川恵 議員(自由民主党・無所属の会)#4
[中略]その中でも特に被害が深刻なSNS型投資やロマンス詐欺などにおけるデータ通信サービスの不正利用の実態についてどのように把握しているのか、お伺いいたします。
遠藤剛 警察庁長官官房審議官 #5
令和七年の特殊詐欺による被害額約三千二百四十一億円のうち、SNS型投資・ロマンス詐欺の被害額は約一千八百二十七億円を占めておりまして、被害者をだます際に使われる連絡ツールの九割以上においてメッセージアプリなどのデータ通信サービスが不正に利用されているところでございます。
湯本博信 総務省総合通信基盤局長 #7
御指摘のとおり、大手の主要事業者におきましては、データ通信専用SIMにつきまして、既に自主的に本人確認を行っているものと承知しているところでございます。一方で、本法における総務大臣による監督規定の対象とはならず、その結果として、本人確認の実効性が必ずしも確保できないケースもあるなどの課題があるところでございます。
また、中小規模の事業者の中には、データ通信専用SIMにつきまして、自主的な確認をそもそも行っていない者も相当数いるというふうに考えられます。[中略]
2026年5月21日 参議院 総務委員会(資料07)
奥村祥大 議員(国民民主党・新緑風会)#48
[中略]この一定数というのが、ぼやかされた今のところ表現だと思いますが、これをどれほどの数を指すということになるのか[中略]
湯本博信 総務省総合通信基盤局長 #49
役務提供拒否が可能となる具体的な回線数につきましては省令で定める予定でございまして、本法案をお認めいただいた後、関係者の意見を丁寧に伺いながら検討してまいります。
回線数の上限につきましては、例えば、現在、MNO等が所属する電気通信事業者協会におきましては音声通信に関する個人契約の上限回線数を原則五回線に制限する自主基準を設けているところでございます。この基準につきましては、利用者からの苦情なども寄せられておらず円滑に運用されているものと伺っており、これを一つの目安として、サービスの種類や利用用途等に応じた回線数を定めることとなると考えているところでございます。[中略]
衆参の委員会と本会議で、この法律案への討論は会議録にありません(資料05 #179・資料08 #34)。
会派の名前は、会議録の会派の欄のとおりです。
経過
| 日付 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2026年3月24日 | 内閣が衆議院に提出(受理) | 資料02 |
| 2026年4月27日 | 衆議院 総務委員会に付託 | 資料02 |
| 2026年4月28日 | 衆議院 総務委員会で大臣の趣旨説明 | 資料04 |
| 2026年5月12日 | 衆議院 総務委員会で質疑・採決。可決(起立総員・附帯決議あり) | 資料05 |
| 2026年5月14日 | 衆議院 本会議で可決(起立多数) | 資料06 |
| 2026年5月18日 | 参議院 総務委員会に付託 | 資料03 |
| 2026年5月21日 | 参議院 総務委員会で可決(多数) | 資料03・資料08 #34 |
| 2026年5月22日 | 参議院 本会議で可決(賛成237・反対5)。成立 | 資料03・08 |
| 2026年5月29日 | 公布(法律第25号) | 資料02 |
| この後 | 公布から1年を超えない範囲の政令で定める日に施行 | 資料01 |
訂正の記録
なし
確かめた所と読むときの注意
確かめた所
- 法律の中身(題名・対象の拡大・本人確認の方法の例・権限の確認・警察署長の照会・回線数による提供拒否・施行日)は、衆議院のページの法律案の本文(資料01)を読んで確かめました(2026年10月25日)。衆議院の議案のページでは、衆参とも修正はありません(資料02)
- 提出・付託・議決・公布の日と、衆議院の会派の欄は、衆議院の議案のページ(資料02)で確かめました
- 参議院の会派ごとの票は、参議院の投票結果のページ(資料03)で確かめ、議長の報告の数(資料08 #37)と合うことを足し算で確かめました
- 国会の字は、すべて国会会議録検索システムの API で取った本文と照らしました
読むときの注意
- 特殊詐欺の被害額は、警察庁の審議官の答弁の数です
- 電気通信事業者協会の「原則五回線」の自主基準は、局長の答弁の字によります
