食糧法の改正 大規模な米の事業者に在庫の常時保有(民間備蓄)と定期報告 生産調整方針の規定はなくし、目的は「需給の安定を図り、これを通じて価格の安定化」に
テーマ:国会・農業と食料|出来事:2026年4月3日(法律案の提出)〜2026年6月3日(衆議院で可決)〜2026年7月8日(参議院で可決・成立)〜2026年7月15日(公布)|最終更新:2026年10月31日
法律の中身は、衆議院のページに載っている法律案の本文の字です。国会の発言は、国会会議録の字です(# は会議録の発言番号)。会派の賛否は、衆議院の議案のページと、参議院の本会議の投票結果のページの記録のとおりです。
要点
- 大規模な米の出荷・販売の事業者(民間備蓄事業者)は、「基準保有量」の米を常に持っていなければならなくなります。基準保有量は、事業者ごとに前の年の出荷・販売の数量の10%を超えず、全部の事業者の合計が政府の備蓄の目標数量のおおむね25%を超えない範囲で決めます。供給が足りないとき、大臣は基準保有量を減らし、譲り渡しを要請・勧告・命令できます。(資料01・資料04 #7)
- 一定規模以上の米の事業者と、米を原材料とする食品の加工・製造の事業者に、在庫数量などの定期報告を義務づけます。報告をしない・うその報告をしたときは100万円以下の罰金です。届出の対象にも、米を原材料とする食品の加工・製造の事業者を加えました。(資料01)
- 国が認定する「生産調整方針」の規定をなくし、米の生産者は「主体的に…需要に応じた生産を行うよう努める」と書きました。法律の目的などにあった「需給及び価格の安定」は、「需給の安定を図り、及びこれを通じてその価格の安定化」に改めています。(資料01・資料04 #7)
- 衆議院は2026年6月3日に起立多数、参議院は7月8日に押しボタンの投票で賛成169・反対72で可決し、成立しました。衆議院の反対会派の欄は参政党と日本共産党です。参議院では、立憲民主・無所属も反対の討論をしました。(資料02・03・資料08 #49・#52)
根拠
法律の中身(法律案の本文)
| 条(改正後の食糧法) | 中身 | 出典 |
|---|---|---|
| 第1条・第2条など | 「需給及び価格の安定」を「需給の安定を図り、及びこれを通じてその価格の安定化」に改める。政府の基本方針から「生産調整の円滑な推進」の字を除く | 資料01 |
| 第3条第2項 | 備蓄の目的の「生産量の減少によりその」の字を削る(大臣の説明では、需要の増加による供給不足にも備えるため) | 資料01・資料04 #7 |
| 第5条(新設) | 米の生産者は、主体的に需要に応じた生産を行うよう努める。生産者の団体は援助に、地方公共団体は情報の提供に努める。政府は、新たな需要の開拓・輸出の促進・生産性の向上などの施策を講ずる | 資料01 |
| 改正の前の第5条〜第7条 | 生産調整方針の款を削る | 資料01 |
| 第9条〜第11条 | 一定規模以上の米の出荷・販売、米を原材料とする食品の加工・製造の事業者は届出をし、帳簿を備え、在庫数量・出荷数量などを毎年決まった時期に報告する。国はその概要を公表する | 資料01 |
| 第33条の2〜第33条の8(新設・民間備蓄) | 民間備蓄事業者は基準保有量を毎年届け出て、常時保有する。災害などのときは減らせる。供給不足のときは大臣が基準保有量を減らし、譲渡しの要請・勧告・公表・命令ができる | 資料01 |
| 第48条の2(新設) | 政府は、民間備蓄事業者の常時保有が円滑に行われるよう、必要な財政上の措置などを講ずる | 資料01 |
| 第52条の2(新設) | 主務大臣は農林水産大臣。米を原材料とする酒類の製造の事業は、財務大臣と農林水産大臣 | 資料01 |
| 第58条(新設) | 定期報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、100万円以下の罰金 | 資料01 |
| 附則第1条 | 公布から1年以内の政令で定める日に施行。民間備蓄の節などは、公布から2年以内の政令で定める日 | 資料01 |
| 附則第8条 | 施行後4年を目途に、施行の状況を検討する | 資料01 |
法律案の理由の欄の書き出しは、「今般の米価高騰下で生じた課題に対応し」です(資料01)。
基準保有量の上限(法律の字)
- 1つの事業者:その年の前の年の出荷数量・販売数量の「百分の十」を超えない
- 全部の事業者の合計:備蓄の目標数量の「おおむね百分の二十五」を超えない
基準保有量の具体的な算定は、農林水産省令で定めます(資料01)。
会派の賛否(記録にある粒度のまま)
衆議院 本会議 2026年6月3日(起立による採決・起立多数)(資料02・資料06 #4・#5)
| 賛成会派(記録の字) | 反対会派(記録の字) |
|---|---|
| 自由民主党・無所属の会; 中道改革連合・無所属; 日本維新の会; 国民民主党・無所属クラブ; チームみらい | 参政党; 日本共産党 |
参議院 本会議 2026年7月8日(押しボタンの投票。投票総数241・賛成169・反対72)(資料03)
| 会派(人数) | 賛成 | 反対 |
|---|---|---|
| 自由民主党・無所属の会(101) | 99 | 0 |
| 立憲民主・無所属(40) | 0 | 39 |
| 国民民主党・新緑風会(25) | 23 | 0 |
| 公明党(21) | 21 | 0 |
| 日本維新の会(19) | 19 | 0 |
| 参政党(15) | 0 | 15 |
| 日本共産党(7) | 0 | 7 |
| れいわ新選組(5) | 0 | 5 |
| 日本保守党(2) | 2 | 0 |
| 沖縄の風(2) | 0 | 2 |
| チームみらい・無所属の会(2) | 2 | 0 |
| 社会民主党(2) | 0 | 2 |
| 各派に属しない議員(6) | 3 | 2 |
賛成と反対の合計が会派の人数より少ないのは、投票しなかった議員の分です。賛成の合計169・反対の合計72は、議長の報告(資料08 #52)と一致します(このページの足し算)。
参議院の農林水産委員会では、国民民主党・新緑風会が修正案を出し、否決されました。備蓄と民間備蓄の定義の修正や、政府の責務の規定を新しく置く案です(資料08 #49)。
資料
| 番号 | 資料 | 種類 | 確かめた日 |
|---|---|---|---|
| 01 | 衆議院「閣法 第221回国会 48 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案」提出時法律案 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g22109048.htm | 公式資料 | 2026-10-25(本則・附則・理由を読んだ) |
| 02 | 衆議院 同法律案の議案審議経過情報 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DE25DA.htm | 公式資料 | 2026-10-25(受理 4月3日・付託 5月12日 農林水産委員会・審査終了 6月2日 可決・本会議 6月3日 可決・参議院 7月8日 可決・公布 7月15日 法律第55号) |
| 03 | 参議院 同法律案の審議経過と本会議の投票結果 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221080221048.htm https://www.sangiin.go.jp/japanese/touhyoulist/221/221-0708-v006.htm | 公式資料 | 2026-10-25 |
| 04 | 国会会議録 衆議院 本会議 2026年5月12日 #7(鈴木農林水産大臣の趣旨説明) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122105254X01720260512/7 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 05 | 国会会議録 衆議院 農林水産委員会 2026年6月2日 #105(木下敏之議員の反対の討論)・#107・#108(採決) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122105007X01220260602/105 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 06 | 国会会議録 衆議院 本会議 2026年6月3日 #3(農林水産委員長の報告)・#4・#5(採決) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122105254X02220260603/3 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 07 | 国会会議録 参議院 農林水産委員会 2026年7月7日 #170(横沢高徳議員の反対の討論)・#173(岩渕友議員の反対の討論) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115007X01320260707/170 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 08 | 国会会議録 参議院 本会議 2026年7月8日 #49(農林水産委員長の報告)・#52(投票の結果) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115254X02620260708/52 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 09 | 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の版の一覧(e-Gov の法令 API) https://laws.e-gov.go.jp/law/406AC0000000113 | 法令 | 2026-10-25(令和8年法律第55号による改正の版として、2026年7月15日(施行中)・2027年4月1日・2028年4月1日の3つが載っている。未施行の2つに「政令で定める日」の注記は無い) |
国会のやりとり
字は国会会議録のとおりです。[中略]の所は、会議録の字を省きました。
2026年5月12日 衆議院 本会議(趣旨説明)(資料04)
鈴木憲和 農林水産大臣 #7
米については、令和六年八月、南海トラフ地震臨時情報等を受けた需要の急増による小売店での品薄などに起因して価格が上昇し、令和七年三月には前年の約二倍にまで価格が高騰し、供給不安も発生しました。
この価格高騰の要因及び供給不安解消のために行った政府備蓄の売渡しの対応を検証した結果、農林水産省が多様化する流通実態を的確に把握できていなかったことや、政府備蓄は売渡し手続に時間を要し、機動性に欠けていたという課題が明らかになりました。[中略]
2026年6月2日 衆議院 農林水産委員会(反対の討論)(資料05)
木下敏之 議員(参政党)#105
[中略]本法案は、食料安全保障における国家の責任を弱め、政府備蓄に代えて民間備蓄に依存する方向へ道を開く改正内容となっていると思います。[中略]
2026年7月7日 参議院 農林水産委員会(反対の討論)(資料07)
横沢高徳 議員(立憲民主・無所属)#170
[中略]まず、国全体の需要と供給の見通しを立てるため、届出事業者の拡大や、事業者に対し在庫量等の報告を求め、流通実態の把握に精度を高める点は必要であると考えます。
懸念される点は、米騒動を引き起こした国の責任が背景にあるにもかかわらず、食糧法改正の内容は国の責任の在り方が不十分であり、生産者から消費者に至るまで国民の不安を払拭できるものとなっていない点です。[中略]
岩渕友 議員(日本共産党)#173
[中略]本法案は逆に、主要食糧の需給と価格の安定と並列で書かれていた文言を、需給の安定を図り、これを通じて価格の安定化を図るに差し替えました。[中略]
参議院の委員会では、ほかに2人が討論をしました。国民民主党・新緑風会の舟山康江議員は原案と修正案に賛成、参政党の杉本純子議員は原案と修正案に反対です(資料08 #49)。
会派の名前は、会議録の会派の欄のとおりです。
経過
| 日付 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2026年4月3日 | 内閣が衆議院に提出(受理) | 資料02 |
| 2026年5月12日 | 衆議院 本会議で趣旨説明と質疑。農林水産委員会に付託 | 資料02・04・06 |
| 2026年5月13日〜6月2日 | 衆議院 農林水産委員会で質疑(5月20日は参考人) | 資料06 #3 |
| 2026年6月2日 | 衆議院 農林水産委員会で可決(起立多数・附帯決議あり) | 資料05 |
| 2026年6月3日 | 衆議院 本会議で可決(起立多数) | 資料06 |
| 2026年6月17日 | 参議院 本会議で趣旨説明と質疑。農林水産委員会に付託 | 資料03 |
| 2026年7月7日 | 参議院 農林水産委員会で、国民民主の修正案を否決、原案を可決(多数・附帯決議あり) | 資料08 #49 |
| 2026年7月8日 | 参議院 本会議で可決(賛成169・反対72)。成立 | 資料03・08 |
| 2026年7月15日 | 公布(法律第55号) | 資料02 |
| 2027年4月1日・2028年4月1日 | e-Gov の法令は、この2つの日に施行する版を載せている(附則は、本体が公布から1年以内、民間備蓄が2年以内の政令で定める日) | 資料01・09 |
訂正の記録
なし
確かめた所と読むときの注意
確かめた所
- 法律の中身(目的の字・生産調整方針の削除・需要に応じた生産・届出と定期報告・民間備蓄・罰則・施行日・4年後の検討)は、衆議院のページの法律案の本文(資料01)を読んで確かめました(2026年10月25日)。衆議院の議案のページでは、衆参とも修正はありません(資料02)
- 提出・付託・議決・公布の日と、衆議院の会派の欄は、衆議院の議案のページ(資料02)で確かめました
- 参議院の会派ごとの票は、参議院の投票結果のページ(資料03)で確かめ、議長の報告の数(資料08 #52)と合うことを足し算で確かめました
- 国会の字は、すべて国会会議録検索システムの API で取った本文と照らしました
読むときの注意
- 「民間備蓄事業者」「特定規模」の具体的な規模は、政令・省令で決まります
- 参政党の木下議員は、討論で「百万トンしかない政府備蓄米」と述べています(資料05 #105)
- 「令和七年三月には前年の約二倍」の米の価格は、大臣の説明の数です
